縺
- violetapplemachine
- 5月30日
- 読了時間: 1分
黒い表紙の手帳を開けばそこ一面に書いてあったものです
筆跡のていを成していないそれは私の日記でした
眺めている…眺めていた。
すると白の紙面に叩き付けられていた大きな黒の糸屑が
浮かび上がり解けてゆくではありませんか
字とも言葉ともていを成さないそれは長い長い一本の糸になると私の身体に巻き付いてくるのです
私と言いましたらその様が大変面白かったものですから
どうなることかと只俯瞰しておりました
そのとんまさが幸いであったのか
果たして私は糸から解放されました
すなわち糸はビデオテープの逆再生のようにくるくるくる
とその戒めを解いた
糸はすると虚空に再び私なしで私の形を作ってゆくのです
すなわち何もないところに、私がいるかのように、私に巻き付いた形をそっくりそのまま再現してゆきました
私はこうしてこの世にもうひとり存在しています