top of page
検索

  • violetapplemachine
  • 5月30日
  • 読了時間: 1分


黒い表紙の手帳を開けばそこ一面に書いてあったものです


筆跡のていを成していないそれは私の日記でした


眺めている…眺めていた。


すると白の紙面に叩き付けられていた大きな黒の糸屑が


浮かび上がり解けてゆくではありませんか


字とも言葉ともていを成さないそれは長い長い一本の糸になると私の身体に巻き付いてくるのです


私と言いましたらその様が大変面白かったものですから


どうなることかと只俯瞰しておりました


そのとんまさが幸いであったのか


果たして私は糸から解放されました


すなわち糸はビデオテープの逆再生のようにくるくるくる


とその戒めを解いた


糸はすると虚空に再び私なしで私の形を作ってゆくのです


すなわち何もないところに、私がいるかのように、私に巻き付いた形をそっくりそのまま再現してゆきました


私はこうしてこの世にもうひとり存在しています

 
 

最新記事

すべて表示
我が憤怒

ひとつ、ふたつ、みっつ。 みっつ、ふたつ、ひとつ。 その光は人の形を採っており、 人型の容器に我々はおさまり、 そうであるから我々は群れを成す 我々光たちは滑車より遅く、水車よりは速く。 (一個の魂に、あえなく鈍く光る魂の一群が突き立つ...

 
 
kingdom(In The Realms of)

鮮血のような太陽が、 朽ち果てたコンビニのレジ袋が 置き去りにされたままなのを 干からびるまで溶かそうとしていた。 地団駄を踏む、 地団駄を踏む、 地団駄を踏む。 同時に、 童話の登場人物たちは、私の中で いつでも私を待っており、私を愛している...

 
 
mistletoe

ふたりのつないだ手が、大勢の身体が、溶けてゆく やがてそれは水となり海となり…星となって そして溶かし切れないものは棘の形をした泡となって消えますようにという、祈り 何処へも行かない 何者にもなれる 何者にもなれない せめて星になりたい 宿木があなたの背に根を付ける...

 
 

©2025 Fuu

bottom of page