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邪悪

  • violetapplemachine
  • 5月30日
  • 読了時間: 2分


邪悪が、そこらじゅうで楽しそうに跳ねている。


邪悪は鞠の形をしており、ふわふわとした黒いなめらかな毛がその身を覆っている。

撫でてみると心地が良い。

きっといい匂いがする。

大小さまざまな邪悪が居る--といっても、最大でバランスボールくらいの大きさである。

最小はピンポン玉くらいだろうか。


僕の仕事は邪悪を踏み潰すことだ。

これらの邪悪は放置していてはいけないと言われている。

誰が決めたのかわからない。

僕の仕事も誰が決めたのかわからない。

とにかく、踏み潰す。

トマトくらいの大きさの邪悪をぐりっと重心を掛けて踏み潰すと泥の塊になって弾けた。

正直あまりいい気分ではない。

足元が汚れることも、この行為自体も。

邪悪が命を持つのかは分からぬ。

だがこんなことをしている以上は、邪悪に命が在るかどうか多少は気にするというものである。


邪悪とは概念である。

鞠の形をした概念である。

これらは至るところで跳梁跋扈し、人の目につく。

僕は思うのだ。

おそらくこれらは「真の悪」ではないと。

邪悪だとか呼ばれているだけで--いや、邪悪であることは確かなのだが--定められているのだが--……やはり放置は許されないものか。


そんなことを考えながら足元を見ていると、大きな影が僕に掛かっていることに気付く。

上を見れば--巨大な足がある!

僕は踏み潰されてしまった。



悪とは解き明かしてやるべき崇高な正体など持たない馬鹿げた矮小な存在であり、例えばその辺を跳ねている大小様々な鞠のように鬱陶しく人の目につくものなのです。

 
 

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